進捗状況 (2023年7~9月)
不適正盛土の監視
〇技術検証の実施
昨年度の技術検証に引き続き、衛星データの解析による切盛土作業の検出性能についての更なる検証を行いました。
〇技術検証に用いた解析手法
検証には、SAR衛星画像・光学衛星画像という特徴の異なる2種類の衛星画像を利用しました。
(1)SAR衛星画像を用いた解析
SAR衛星画像を用いた主な地表面の解析手法には、差分強度解析と差分コヒーレンス解析の2種類があります。今回は、分解能が3m*1である、JAXAのALOS-2のデータを使用しました。
(参考)一般財団法人 リモートセンシング技術センター ホームページ
https://www.restec.or.jp/satellite/alos-2.html
*1 地球観測衛星に搭載されたセンサが、地上の物体をどれくらいの大きさまで見分けることができるかを示すもので、センサの1画素あたりの地上投影サイズ
ア 差分強度解析
二時期間のSAR衛星画像を比較し、地表から反射された電磁波の強度の変化を把握する手法です。今回の解析では、前時期の強度に対して後時期の強度が弱まった箇所は画像上で赤色に、強度が強まった箇所は青色に着色されます。強度は、地表面の被覆状態に応じて変化します。
イ 差分コヒーレンス解析
二時期間のSAR画像のコヒーレンス(波長の干渉のしやすさ)を把握する手法です。地表面の被覆状態に変化がない場合はコヒーレンスが高くなり、何らかの変化が生じている場合は低くなります。コヒーレンスが低下した範囲を検出することによって、地表面の被覆状態の変化箇所を把握することができます。
(2)光学衛星画像を用いた解析
光学衛星画像は、可視光線領域の電磁波を取得するものであるため、航空写真のように取り扱うことができます。AIを用いた解析や、植生指標(NDVI)を用いた解析なども考えられますが、本技術検証では、まず、目視判読の可否を確認しました。今回は、分解能が0.5mのPleiades、1.5mのSPOT6/7(いずれもAirbus DS社)のデータを使用しました。
〇技術検証の内容と結果
検証サイトにおける切盛土箇所について、各手法での判読が可能かを検証しました。
検証により、技術的に検出不可能となる場合があるものの、SAR衛星画像では概ね3,000㎡以上、光学衛星画像では概ね500㎡以上の切盛土箇所を検知することが可能という結果を得ました。SAR衛星画像の差分コヒーレンス解析では、差分強度解析と比べて、検出できた箇所が多かったものの、切盛土箇所以外も検出してしまう傾向がありました。
今後の取組(2023年10~12月)
不適正盛土の監視
〇 試行運用の実施
今後、技術検証の結果を踏まえ、多摩地域を対象に盛土箇所の検知を行う、試行運用を進めます。技術検証の結果を踏まえると、切盛土箇所以外を検知してしまう可能性が想定されるため、試行運用を通じて、効果的に絞り込みを行うための手法などを検討していきます。