東京都はスタートアップとの協働の実践を積み重ね、社会課題の解決などに取り組んでいます。この記事では、これまであまり知られていなかった各局とスタートアップとの協働の実践の現場や担当者の思いに焦点を当てて、ご紹介していきます。
今回は、第12回・13回Upgrade with Tokyo(都政課題解決に向けたスタートアップピッチイベント)に参加した港湾局臨海開発部 開発企画課の担当者にお話を伺いました。
〇Upgrade with Tokyoへ参加した理由・背景
―Upgrade with Tokyoへの参加理由を教えてください。
港湾局では、臨海副都心を「デジタルテクノロジーの実装」と「スタートアップの集積」を推進するDigital Innovation City(DIC)へと進化させる取組みを実施しており、令和3年3月30日に、DIC実現に向けて協議することを目的とした、DIC協議会※を設立しました。
※東京都、エリアマネジメント、研究機関、地元企業・地元団体が参画するDigital Innovation City協議会(略称:DIC協議会)
DIC実現に向け、臨海副都心の街全体を先端技術のショーケースとして活用していくために、スタートアップの先端技術を活用した製品やサービスの実証実験等を実施したいと考えていましたが、港湾局にはスタートアップとのチャネルもなかったので、産業労働局商工部の担当者に相談したところ、Upgrade with Tokyoへ参加してみては、と提案をいただいたことがきっかけです。
〇Upgrade with Tokyoへの参加を決めてからイベント当日まで
―参加を決めてから、ピッチイベントまでの様子を教えてください。
参加に向けて具体的な検討を開始したのは今年度(2021年度)に入ってからです。スタートアップに解決を期待するテーマ・課題案の検討から局内の幹部レクまで1か月弱、それから商工部の担当者にテーマと課題を提出しました。
―テーマや課題を決めるのは大変でしたか?
スタートアップの興味を引きやすいテーマや表現の仕方など苦労しました。商工部の担当者や受託事業者に相談に乗っていただき、「具体的な事例を挙げたほうが良いが、スタートアップのアイディアを縛りすぎない程度で」などのアドバイスをもらえて助かりました。
実は、港湾局でも独自にスタートアップ向け実証事業の募集をしましたが、このあたりのノウハウがなかったので、応募者を集めるのに非常に苦戦しました。やはり餅は餅屋だと思いました。
〇Upgrade with Tokyoピッチイベント当日
第12回優勝社: 株式会社ナイトレイ
商品概要: 位置情報ビッグデータを用いた地域活性化支援ソリューション
第13回優勝社: プレティア・テクノロジーズ株式会社
商品概要: AR(拡張現実)アプリケーション開発を容易にするプラットフォーム
当日の詳しい様子はnoteでご紹介しています。
第12回『臨海副都心をデータで見える化』
第13回『臨海副都心のまちの魅力発見と向上』
〇Upgrade with Tokyoで優勝したスタートアップとの協働
―ピッチイベント後のスタートアップとの協働の様子を教えてください。
イベント終了後の初回の打合せは、商工部の担当者が優勝したスタートアップを引き合わせてくれました。打合せには、商工部と受託事業者も同席して今後の進め方などを確認しました。その後、今年度中の新事業分野開拓者認定と契約締結に向けて、2021年7月から港湾局とスタートアップ側の担当者同士の実務的な話し合いを行い、認定を受けた後、2021年12月に政策目的随意契約を締結しました。
―スタートアップには具体的にどんな事を期待していますか?
㈱ナイトレイはロケーションビッグデータの収集解析とそれを活用したサービス提供が特徴です。居住者・就業者・来街者のデータの収集と高度な解析をしてもらい、その結果を参考にして、臨海副都心での街づくりの検討を行っていきます。
プレティア・テクノロジーズ㈱は、多人数での共有が可能なARクラウド技術が特徴です。臨海副都心の各エリア間や施設間の回遊性を向上するサービスや、回遊そのものを楽しくできるようなサービスの開発を期待しています。彼らの開発したサービスを使ったイベント※を2022年3月に行いました。
※臨海副都心でのイベント
「AR謎解きゲーム メガマウっさんを解き放て! inお台場」
プレティア・テクノロジーズ㈱へのインタビューをまとめたnoteの記事も併せてご覧ください。
―スタートアップとの協働で良かった点や苦労した点を教えてください。
私たちは、「臨海副都心の街全体を先端技術のショーケースにする」ことを掲げています。スタートアップ側のご担当者と議論する中で、曖昧だった自分たちのやりたい事が徐々に具体化されていき、それが想像もしていなかった新しいアイディアにつながっていくことが興味深かったです。
苦労した点は、お互いの仕事の進め方に慣れていなかった点です。例えば、スタートアップ側の担当者は、普段、ペーパレスや押印レスを前提とした仕事の進め方をしているので、都の契約手続きに戸惑ったようです。
―スタートアップとの協働について、事前に想像していたことと違った点がありましたか?
今までの委託事業の場合、代理店などの受託事業者に事業をパッケージで任せるケースが多いですが、スタートアップの場合は得意分野がある特定の分野に特化しているため、普段以上に全体の座組を考える必要がありました。その分、スタートアップの強みを生かせるよう、自分たちが他の関係者を巻き込んだり、調整したりしつつ、どの部分をスタートアップに任せるかという発想が必要だと思います。
―今後のスタートアップとの協働について、考えていることがあれば教えてください。
臨海副都心における「デジタルテクノロジーの実装」と「スタートアップの集積」という目標の実現に向けて、これからもスタートアップと一緒にチャレンジしていきたいと考えています。
―スタートアップとの協働のコツは、 仕様で固めたことをやってもらうのではなく、事業を企画する段階から、対等の立場で議論していくことなんですね。港湾局の皆様、お話を聞かせていただき、ありがとうございました。
―スタートアップ協働戦略v.1.0に基づき、スタートアップとの協働を更に推進していきます。Upgrade with Tokyoなど協働の取組への各局の皆様の積極的なご参加をお願いいたします!