進捗状況(2022年7~9月):東京都立大学ローカル5G環境を活用した最先端研究プロジェクト【総務局】

プロジェクトのイメージ

進捗状況(2022年7~9月)

5Gを活用した最先端研究

○5Gを活用した最先端研究を行い、成果を社会に発信しました。(5テーマ)

■研究課題1「通信資源の利用効率最大化を目指したモバイルネットワーキング」

研究代表者:朝香 卓也 教授(システムデザイン研究科)

本研究では、5Gの潜在能力(高速大容量、低遅延、同時多接続)をより効果的に活用する技術の確立を目指し、研究を行っています。

2022年7月から9月までの間に、以下の事項に取り組みました。

・8k動画映像共有システムのプロトタイプを実装し、東京都立大学日野キャンパス内のローカル5G環境下において、主観評価実験を実施
・無人飛行機(ドローン)で推定された信号の到来方向から、ローカル5G基地局等、未知の信号波源を推定する手法を分析
・5Gユーザの集団行動特性の理解とモデル化により、様々なユーザの集団行動に応じて、自律的に通信負荷を分散する技術の基礎検討を実施

ドローンが飛行し、無線通信の電波の通り道を立体的に推定
ドローンによる3次元無線伝搬路推定(ドローンが飛行し、無線通信の電波の通り道を立体的に推定)

■研究課題2「L5Gネットワークを用いた次世代マルチモーダルセンシング」

研究代表者:和田 圭二 教授(システムデザイン研究科)

L(ローカル)5Gネットワークを用いて、次世代の情報通信技術を基盤とするセンシングシステム(無線通信機能を持つ複数の小型センサー端末を特定の空間内の各所に設置し、複数の計測方法で同時計測することで、空間内の情報を計測・判別するシステム)の構築・提案を目指しています。また、電磁環境の計測やエネルギーの制御技術の基盤構築に取り組むことにより、安心・安全なシステムの実現可能性について、立証を行っています。これらの取組を通じて、人間の動きや密集度を安定的に計測・評価することが可能になり、ウィズコロナ及びポストコロナを見据えた感染症対策や、災害時に安全な避難経路を提示するなど、次世代の防災システムの構築に貢献することを見込んでいます。

2022年7月から9月の間に、以下の事項に取り組みました。
・東京都立大学日野キャンパス及び南大沢キャンパスにおいて、ローカル5Gの電磁環境を計測
・電子情報通信学会において、ミリ波帯(※)の人体ばく露評価(電波の人体に対する安全性に関する評価)に関する成果を発表
・東京都立大学日野キャンパスの電波暗室において、電力の輸送・変換・制御・供給等に関する技術を用いた機器(パワエレ機器)が発する放射電磁ノイズの計測を実施
(※)5Gの周波数帯の一つで、東京都立大学に整備したローカル5G環境においては、28Ghz帯の「ミリ波」と4.7Ghz帯の「Sub6」の2種類の周波数帯があります。周波数が高いほど大容量のデータを運べる反面、障害物に反射しやすくなるためエリアを安定させるのが難しいという特徴があります。

ローカル5Gの電磁環境の計測電子回路が発生する放射電磁ノイズの計測
ローカル5Gの電磁環境の計測電子回路から発生する放射電磁ノイズの計測

■研究課題3「5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築」

研究代表者:ヤェム ヴィボル 助教(システムデザイン研究科)

5Gの超高速通信を用いて、離れた複数空間において、自分や誰かの分身となって行動したり、空間内の様々な情報を、まるでその場にいるかのように伝えてくれるロボットの開発や操作等の研究に取り組んでいます。地域医療や高齢者支援、災害支援の現場での活用を見込んでいます。

2022年7月から9月の間に、以下の事項に取り組みました。

・遠隔ロボットを操縦する際に、操縦者に、自分自身がその場で歩いているような感覚を感じさせる歩行感覚提示装置を開発しており、これまでの装置の小型化と軽量化を実施。実証実験を行い、120Kgの体重を持つ操縦者にも対応できることを確認
・バンクーバーで開催された国際学会、ACM SIGGRAPH 2022(8月)にて、歩行感覚提示装置のデモ展示を実施。操縦の操作性などについて評価を受けるとともに、ディスカッションを実施。その際、本システムの体験の質が高いことが評価され、Laval Virtual Award at SIGGRAPHを受賞

また、ロボット工学分野の国際ジャーナルであるAdvanced Roboticsに、本研究の成果を含む論文が掲載されました。

小型化・軽量化前後の歩行感覚提示装置SIGGRAPH 2022でのデモ展示の様子Laval Virtual Award at SIGGRAPH 2022
小型化・軽量化前後の歩行感覚提示装置ACM SIGGRAPH 2022でのデモ展示の様子Laval Virtual Award at SIGGRAPH 2022

■その他の研究

上記のほか、以下の2テーマの研究を推進しています。
各研究の概要については、こちらの都立大ホームページをご覧ください。

・ARゲームで楽しく単独移動を支援するAI車椅子システムの社会実装
・プレス加工DXのための5G環境IoTプラットフォームの構築

民間企業等の社会実装促進

○ローカル5G環境の民間活用等を通じて、5Gの新たなユースケースやサービスの創出を促進(2024年度末までに15件)

2022年7月から9月の間に、以下の事項に取り組みました。
・9月までに1件の実証フィールド提供を実施

【実施例】
サイトセンシング株式会社、ReGACY Innovation Group株式会社がドローンで撮影した大容量映像をローカル5G通信によりリアルタイムに高速でサーバーに伝送し、3Dモデル(ウォークスルー映像)を作成しました。

東京都立大学日野キャンパス体育館で飛行するドローンドローンを使って作成した3Dモデル

今後の取組(2022年10~12月)

5Gを活用した最先端研究

■研究課題1 「通信資源の利用効率最大化を目指したモバイルネットワーキング

・大都市災害時での安心・安全・減災を実現するためのモバイルネットワーキング技術の確立を目指し、研究成果の統合に向けた検討を開始
・新たなネットワーキング技術分野の確立に向けた基礎検討を実施

■研究課題2 「 L5Gネットワークを用いた次世代マルチモーダルセンシング 」

・ローカル5G環境を使った通信に関する実験環境構築
・ローカル5Gを活用したヒトの密集度を計測するための実験装置構築
・ミリ波とSub6の両方の周波数帯を対象とした電磁環境計測
・電力の輸送・変換・制御・供給等を行う電子回路(パワエレ回路)とローカル5Gの電磁環境の干渉について計測

■研究課題3 「 5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築 」

・自分があたかも同時に離れた複数空間に存在するような感覚(二重身体認知)に関する調査実験を実施
・歩行感覚提示装置を発展させた、身体パフォーマンス(立つ、歩く、座るなどの動作)提示装置を設計し、特許申請予定

民間企業等の社会実装促進

東京都立大学南大沢キャンパス及び日野キャンパスにて新たな企業にローカル5G環境を提供し、新たに2件の実証実験を行えるよう調整中です。