進捗状況(2023年4~6月)
5Gを活用した最先端研究
○5Gを活用した最先端研究を行い、成果を社会に発信しました。(5テーマ)
■研究課題1「通信資源の利用効率最大化を目指したモバイルネットワーキング」
研究代表者:朝香 卓也 教授(システムデザイン研究科)
本研究では、5Gの潜在能力(高速大容量、低遅延、同時多接続)をより効果的に活用する技術の確立を目指し、以下の3テーマについて検討を行っています。
テーマ1:ネットワークエッジ(※1)を用いた分散コンピューティング(※2)/
分散データ配信技術
テーマ2:ドローン基地局による高効率モバイルアクセスネットワーク構成技術
テーマ3:ユーザの集団行動特性を考慮した通信資源の効率的利用技術
(※1)ネットワークの末端。データや信号を送受信したりする末端の機器
(※2)プログラムの個々の部分が同時並行的に複数のコンピュータ上で実行され、各々がネットワークを介して互いに通信を行いながら処理が進行する方法
2023年4月から6月までの間に、以下の事項に取り組みました。
【テーマ1】
・見守り・監視サービスの高度化を実現するための高画質で広範囲な映像を用いた8k360度映像共有システムの日野キャンパス内ローカル5G環境下におけるネットワーク性能評価とサービス品質主観評価実験を実施
・その成果を電子情報通信学会コミュニケーションクオリティ研究会(5月高松市)にて学会発表し、学生優秀発表賞を受賞
8k360度高精細映像共有システムと評価の様子 |
【テーマ2】
・論文タイトル「NLOS 環境における複数UAVを用いた単一波源位置の最ゆう推定手法」を電子情報通信学会に投稿し、論文賞・最優秀論文賞を受賞
・ローカル5G基地局を使って測定実験を実施し、その成果が国際的論文誌(IEEE Access)に掲載
電子情報通信学会の論文賞・最優秀論文賞の表彰状と記念の盾 |
【テーマ3】
・自律分散スペクトルクラスタリング(※)に関する研究成果が、国際的論文誌(IEEE Access)に掲載
(※)無線端末同士がリレー式に情報を送受信しながら自律的に大規模なネットワークを構成する際の困難な課題である、ネットワークを分割し、グルーピングされた管理を可能にする技術。通常、ネットワークの全体構造を把握できないと分割、グルーピングは難しいが、全体構造が分からなくても、各端末が自分とその隣の情報(局所情報)のみに基づいて自律動作することで、結果的にグルーピングした管理を可能とする技術を確立
■研究課題2「L5Gネットワークを用いた次世代マルチモーダルセンシング」
研究代表者:和田 圭二 教授(システムデザイン研究科)
L(ローカル)5Gネットワークを用いて、次世代の情報通信技術を基盤とするセンシングシステム(無線通信機能を持つ複数の小型センサー端末を特定の空間内の各所に設置し、複数の計測方法で同時計測することで、空間内の情報を計測・判別するシステム)の構築・提案を目指しています。その研究テーマの一つにL5G電波を用いた発展型マルチスタティックレーダに関する研究があります。レーダの分野では、一つの電波アンテナから放射され物体で反射された電波を複数の受信専用アンテナで受信するマルチスタティックレーダと呼ばれる方式が使われています。一方で、Beyond 5G以降には無線基地局間の距離が狭まるOverlapping という状況が想定されています。その場合には、各基地局が送信も受信も両方できる発展型のマルチスタティックレーダとして動作させることが期待できます。加えて、ミリ波とsub6という複数の周波数を使った物理観測も可能となり防災やフィジカルセンシングへの応用を目指しています。
2023年4月から6月の間に、以下の事項に取り組みました。
・東京都立大学日野キャンパスの電波暗室において、L5G電波を用いた発展型マルチスタティックレーダの基礎的な検討実験の実施
パルス圧縮方式を用いて観測した結果 |
■研究課題3「5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築」
研究代表者:西内 信之 教授(システムデザイン研究科)
5Gの超高速通信を用いて、離れた複数空間において、自分や誰かの分身となって行動したり、空間内の様々な情報を、まるでその場にいるかのように伝えてくれるロボットの開発や操作等の研究に取り組んでいます。地域医療や高齢者支援、災害支援の現場での活用を見込んでいます。
2023年4月から6月の間に、以下の事項に取り組みました。
小型化した,車輪型の アバターロボット | LAVAL VIRTUAL 2023で のデモ展示の様子 | オペレータと自分のアバター ロボットとの協調作業の様子 |
・これまでの車輪型のアバターロボットを小型化し、2台開発するとともにその制御を実施
・フランスで開催されたLAVAL VIRTUAL 2023にて、歩行感覚フィードバック装置と2台アバターロボットを利用したデモを展示
・ Mixed Reality(複合現実)の技術を利用し、オペレータと自分のアバターロボットと協調作業できるようなシステムを試作
・ IEEE Accessに投稿した学術雑誌の査読者の反論をいただき、論文の修正と査読者への回答
■その他の研究
上記のほか、以下の2テーマの研究を推進しています。
各研究の概要については、こちらの都立大ホームページをご覧ください。
・ARゲームで楽しく単独移動を支援するAI車椅子システムの社会実装
・プレス加工DXのための5G環境IoTプラットフォームの構築
民間企業等の社会実装促進
○ローカル5G環境の民間活用等を通じて、5Gの新たなユースケースやサービスの創出を促進(2024年度末までに15件)
2023年4月から6月の間に、以下の事項に取り組みました。
・2社の民間企業に実証実験に向けたフィールド見学を実施
今後の取組(2023年7~9月)
5Gを活用した最先端研究
■研究課題1 「通信資源の利用効率最大化を目指したモバイルネットワーキング」
・「大都市災害時での安心・安全・減災を実現するためのモバイルネットワーキング技術の確立」 を目指した3テーマの研究成果の統合に向けた基礎的検討
■研究課題2 「 L5Gネットワークを用いた次世代マルチモーダルセンシング 」
・センシングシステム構築を目的として電波暗室においてマルチスタティック配置での計測
・L5G環境下での通信の効率と電磁環境の関係性に関する計測・シミュレーション
・ミリ波帯無線電力伝送用等間隔サーキュラーアレイアンテナ(※)の開発
・パワーエレクトロニクス機器と無線通信機の電磁干渉評価試験
(※)円周上に等間隔に複数のアンテナを配置した構造のアンテナで、電波をどの方向にでも送ることができ、どの方向から到来する電波も受け取ることができる点が特徴。ミリ波帯にこのアンテナを適用することにより、アンテナそのもののサイズを小さくでき、ドローンなどへの搭載に有利になる。また、そのような工夫により、効率的に無線で電力を送受信したり、通信を行ったりできる新しいアイデアのアンテナ。
■研究課題3 「 5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築 」
・9月に開催される国際会議のCISIM2023と国内学会の日本バチャールリアリティ学会にて研究成果の発表とデモの展示
・IEEE Accessに論文を再投稿
民間企業等の社会実装促進
東京都立大学南大沢キャンパスにて、新たに2件の実証実験を行えるよう調整中です。
■実証実験を随時受付中!
都立大学では民間企業等の社会実装促進を目的に、ローカル5G実証フィールドを無償で提供しております。実証フィールドの詳細については、 都立大ホームページ をご覧ください。