進捗状況(2023年7~9月)
5Gを活用した最先端研究
○5Gを活用した最先端研究を行い、成果を社会に発信しました。
■研究課題1「ARゲームで楽しく単独移動を支援するAI車椅子システムの社会実装」
研究代表者:串山 久美子 教授(システムデザイン研究科)
ローカル5Gによる高速・大容量の移動通信システムを活用し、障がいのある人の楽しい外出機会の創出に資するAI及びARゲームコンテンツによる活動支援システムの開発を、専門の6チームを構成して推進しています。
チーム1 | 車椅子装着センサデバイス・アプリの開発とサービスの提供 |
チーム2 | 自動運転車椅子に関する実験及びデータの収集 |
チーム3 | 車椅子目線での深層学習を用いた障害物・目標物検出システムの開発 |
チーム4 | 健康福祉分野における調査・車椅子身体活動量のリハビリメニューの作成 |
チーム5 | ARゲームコンテンツの制作 |
チーム6 | ワークショップ・社会貢献活動に関する企画 |
2023年7月から9月までの間に、以下の事項に取り組みました。
【ARハッカソンイベントの開催】
・大学教育の先端育成活動として、「車椅子で楽しむ大学内ARゲームの提案」をテーマに、学生を対象とした「ARハッカソン(※)」ゲームと、車いすに関する特別講演を、2023年8月17日から25日まで対面形式で開催。東京都立大学生及び他大学生50名が参加し、東京都立大学日野キャンパス内での車椅子を使用したARゲームのプロトタイピング開発と、紹介動画の制作を実施。
(※)ARハッカソン: ARは「拡張現実(Augmented Reality)」の略で、スマートフォンなどのタブレット端末やARグラスを使って、現実の世界にデジタルな要素を追加するバーチャルリアリティ技術の一つ。ハッカソンはクリエイティブな方法で問題を解決する「ハック(Hack)」と長時間続く競技である「マラソン(Marathon)」とを組み合わせた造語で、IT技術者が集まり短期間集中的に開発作業を行うイベント。
【学会での成果発表】
・エンターテイメントコンピューティング2023(2023年8月30日から9月2日、東京工科大学八王子キャンパス)で、健康福祉・身体活動量のリハビリ研究に関する成果を発表。「起立性調節障害(※)の長期化防止に向けたシリアスゲーム制作におけるプレイヤーのレベルアップ要素が与える影響の検証」を発表し、最優秀研究賞とティザー優秀賞を受賞。
(※)起立性調節障害: 自律神経の乱れによって、立ち上がったときなどに脳への血流が低下し、倦怠感や起床困難、頭痛、めまい、立ちくらみ、腹痛といった症状が起こる10代の若者に多い病気。
・ 第28回日本バーチャルリアリティ学会大会(2023年9月12日から14日、東京たま未来メッセ)で「遠隔地からの車椅子移動操作を伴うコミュニケーションシステム」、「XR STATION:大学環境を使用したARとVRを連続的に融合させた空間整合型XRゲームコンテンツの制作」を口頭発表。全体のプロジェクトの展示を実施。また、本大会の大会長、担当校として本学のローカル5Gの研究紹介を実施。
■研究課題2 「プレス加工DXのための5G環境IoTプラットフォームの構築」
研究代表者:楊 明 教授(システムデザイン研究科)
本研究では、金属プレス加工において、従来、職人の経験や勘に頼っていた異常検出や製造過程における不良品発生率の減少、金型の摩耗予測などの自動化を可能にする、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための5Gプラットフォームを構築することを目指しています。ローカル5Gを活用したプレス機械や金型内蔵センサなど、複数センサからのセンシング情報を無線伝送する実証実験を行います。この実証実験では、プレス加工のプロセスを可視化するとともに、無線伝送の特性により、どのような影響があるかなどを検証し、実用性評価を行います。将来的には、このシステムを活用することで、少子高齢化による労働力確保の課題を踏まえ、若手人材の育成にも寄与することを見込んでいます。
2023年7月から9月までの間に、以下の事項に取り組みました。
・マイクロ板材鍛造(※)におけるセンサ情報とシミュレーション結果との融合によるデータ同化技術を開発し、その成果の一部を国際会議AWMFT&APSTP(2023年5月)で発表した。
・この研究の発展版として、プレス加工のシミュレーションとセンシング情報の融合による高度なプロセス可視化に関する研究を、協力企業である株式会社ヤマナカゴーキンと共同企画し、産学連携の形で進めることになった。
・ミクロな領域における摩擦、潤滑、表面損傷などを評価するための金型を製作し、金型コーティング及びプレス加工の摩擦摩耗特性評価を実施した。
・プレス加工における可視化技術を国際展示会MF-TOKYO2023(2023年7月)でポスター展示及び口頭発表した。
・プレス加工における摩擦特性のその場計測に関する研究成果の一部を第14回塑性加工国際会議 ICTP2023(2023年9月)で発表した。
(※)マイクロ板材鍛造:金属板材を精密機器等の微小な部品へのプレス加工の一種
互いに補完することで、素材変形時の応力分布や摩擦力などをより正確に得ることができ、
プロセス可視化の実現につながることを示す図
ダイブロック表面に各種コーティングを施し、コーティング材の耐摩耗性評価の実施
■研究課題3「5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築」
研究代表者:ヤェム ヴィボル 助教(システムデザイン研究科)
5Gの超高速通信を用いて、離れた複数空間において、自分や誰かの分身となって行動したり、空間内の様々な情報を、まるでその場にいるかのように伝えたりしてくれるロボットの開発や操作等の研究に取り組んでいます。地域医療や高齢者支援、災害支援の現場での活用を見込んでいます。
2023年7月から9月までの間に、以下の事項に取り組みました。
・日本科学未来館で開催されたURCFシンポジウム2023にて、歩行感覚フィードバック装置と2台アバターロボットを利用したデモ展示を行った。
・東京都八王子市で開催された第28回日本バーチャルリアリティ学会にて、3日間連続で本プロジェクトの展示を行った。デモ体験では参加者がアバターロボットの移動とロボットアームの動作を体験できるようにした。また、本学会にて口頭発表を3件行った。
・アバターロボットの自律性のための3D空間スキャンにおける表面再構成法の比較検討を実施した。
・学術雑誌IEEE Accessに投稿した論文を査読者の反論に対して修正し再投稿した結果、採録となった。
■その他の研究
上記のほか、以下の5テーマの研究を推進しています。
各研究の概要については、こちらの都立大ホームページをご覧ください。
・通信資源の利用効率最大化を目指したモバイルネットワーキング
・L5Gネットワークを用いた次世代マルチモーダルセンシング
・”全ての人の手元まで”を実現するマイクロ物流プラットフォーム
・超実時間モニタリングのためのロボット知能化基盤技術と5G社会
・6Gに向けたハイダイナミックレンジポジショニング技術の創出
民間企業等の社会実装促進
○ローカル5G環境の民間活用等を通じて、5Gの新たなユースケースやサービスの創出を促進(2022年度末までに7件実施しました。2024年度末までに15件実施することを目標としています。)
2023年7月から9月の間に、以下の事項に取り組みました。
・9月までに6件の実証フィールド提供を実施
【実施例】
LOMBY 株式会社と ReGACY Innovation Group 株式会社は、開発した運搬ロボットをローカル 5G により遠隔操作する実証実験と、ローカル 5G を通じて自律走行時の遠隔監視を行う実証実験を行いました。4G 通信より 5G 通信の方が安定し、かつタイムラグを少なくして遠隔操作、遠隔監視を行えることができることがわかりました。
今後の取組(2023年10~12月)
5Gを活用した最先端研究
■研究課題1「ARゲームで楽しく単独移動を支援するAI車椅子システムの社会実装」
・国立障害者リハビリテーションでの車いす装着センサデバイス・アプリの検証、ARハッカソンの成果物に関するヒアリング、車いす目線での深層学習を用いたセグメンテーション検出実験、国際学会ICAT2023への論文投稿を実施。
■研究課題2「プレス加工DXのための5G環境IoTプラットフォームの構築」
・プレス加工のシミュレーションとセンシング情報の融合による高度プロセス可視化に関する研究を、株式会社ヤマナカゴーキンと産学連携の形で進める。
・各種金型コーティング膜のトライボロジー特性評価を実施する。
・プロセス可視化に関する論文を作成し、塑性加工学会誌への投稿を準備する。
■研究課題3「5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築」
・歩行感覚フィードバック装置をより高い精度で改良し、評価実験を行う
・国際学会IEEE VR2023へ論文を投稿する。
民間企業等の社会実装促進
東京都立大学南大沢キャンパスにて、新たな実証実験を行えるよう準備中です。
■実証実験を随時受付中!
都立大学では民間企業等の社会実装促進を目的に、ローカル5G実証フィールドを無償で提供しております。実証フィールドの詳細については、都立大ホームページをご覧ください。