都庁のワークスタイル変革プロジェクトでは、都庁本庁舎での未来型オフィス整備、デジタルツールを活用した事業所の業務改革、システム基盤のクラウド化等の取組を通じて、場所や時間を柔軟に活用した質の高い働き方への転換を目指していきます。
目次
1 都庁本庁舎
(1)未来型オフィスの整備
(2)未来型オフィスを支える新しいツールの導入
2 事業所
3 システム基盤のクラウド環境への転換
4 場所にとらわれない柔軟な働き方の推進
1 都庁本庁舎
進捗状況(2023年7~9月)
都庁本庁舎では、2022年度(昨年度)までの過去3年間で25部門の未来型オフィス整備を実施しました。2023年度(今年度)は更に加速させ、35部門の整備を実施します。
(1) 未来型オフィスの整備
【2022年度に整備した17部門のバージョンアップ】
2022年度に整備した17部門に対し、オフィス整備後の課題に関するヒアリングを実施するとともに、その課題の解決策について検討しました。
各部門からは現状のオフィスに対して、「フロアの緑視率を向上させたい」「オフィス整備によりスッキリと開けた空間になったが、取り扱う情報によっては視線を遮りたい」「打合せスペースやWeb会議のためのスペースをより充実させたい」といった意見が多く出ました。
今後は、上記解決策の実装に向けて調達の手続を行い、オフィスのバージョンアップを図ります。
【未来型オフィス整備の拡大】
①福祉局・保健医療局(総務部・企画部)の整備
7月の福祉局・保健医療局発足に合わせて、両局の総務部・企画部の整備を実施しました。その様子を御紹介します。
整備に当たっては、カーペットのデザインや什器のタイプについて統一感を持たせつつ、それぞれの局で配色を工夫しました。また、連携して業務ができるよう、フロアの中央に両局共有のコラボレーションスペースを設置しました。
窓口には可変性の高い什器を設置しており、来庁人数に合わせて柔軟に対応ができます。書類整理等によって創出したスペースには、一人での業務への集中やWeb会議に適した、セミクローズ型の集中ブースを設けました。
②整備の実施に向けた準備
2023年度に整備を実施する1期・2期整備に続き、2024年度に整備を実施する3期・4期整備の検討も始まっています 。
■1期・2期整備について
1期・2期整備部門は、「レイアウト検討・各種契約」を進めました。
オフィスレイアウトの検討に当たっては、「執務室をパーティションではなく、色や質感でエリア分けできるようにしたい」「発行した出版物を保管・確認できるスペースが欲しい」「機密性の高い情報を扱える遮断された作業スペースも欲しい」など、各部門の要望をヒアリングします。その要望を毎週実施する定例会でオフィスレイアウトに反映し、自分たちの部門にとって最善のレイアウトとなるよう検討を重ねました。
レイアウト決定後は、オフィス整備のための契約手続を進めています。整備に際しては、什器の調達や運搬等に関する契約手続が必要になります。加えて、レイアウト変更に伴う回線工事契約を行うため、業務で使用する情報機器の配置図面を作成する必要もあります。
また、整備当日の段取りの調整も平行して実施しています。整備実施にかけられる時間は1フロア当たり3日間(金~日)のため、スムーズに進められるよう什器の納品・運搬スケジュールなど、綿密に計画しておく必要があります。
■3期・4期整備について
3期・4期整備部門は「インプット」「ワークショップ実施」を行いました。
インプットでは、先進的な民間企業のオフィス視察や、e-ラーニングで未来型オフィスでの新しい働き方を学び、整備に向けて視野を広げました。ワークショップでは、これまでのオフィスの課題抽出や目指す働き方のコンセプトを設定し、新しいオフィスのレイアウトの方針を固めました。4期整備部門の中にはワークショップ実施前の部門もありますが、レイアウト検討に向けて順次実施していきます。
(2) 未来型オフィスを支える新しいツールの導入
第2四半期では、Wi-Fi敷設及びインターネット通信回線強化に向けた契約手続を完了し、実装に向けた検証を重ね、敷設工事に向け、各局等と調整を開始しました。
また、今年度更新予定のTAIMS端末について、コンバーチブルタイプ端末の契約手続を完了し、TAIMS端末として使えるようにするためのマスタイメージ作成を行っています。
今後の取組 (2023年10~12月)
- 2022年度に整備した17部門でのオフィスのバージョンアップに向け、調達等の手続を進めます。
- 1期整備部門のオフィス整備、2期整備部門の契約手続等を実施します。
- 2024年度の未来型オフィス3期・4期の整備を円滑に進められるよう調整を行います。
- Wi-Fi敷設及びインターネット通信回線強化に向けた工事を10月から順次実施していきます。また、来年度の敷設計画の策定及び契約手続に着手していきます。
- マスタイメージを各端末に書き込み、今年度更新時期を迎える関係各局に、順次、配付していきます(主に本庁の各局各部)。
2 事業所
進捗状況(2023年7~9月)
◆職員のアイデアを形に変えて、全ての事業所で業務改革にチャレンジ!
東京都では、場所や時間を柔軟に活用した質の高い働き方への転換に向けて、すべての事業所でデジタルツールを活用した業務改革にチャレンジしていきます。職員のアイデアを形に変えて、すべての事業所で仕事のやり方とQOS(クオリティ・オブ・サービス)をバージョンアップさせるため、各職場が主体となった自律的な業務改革スタイルの確立を目指し、現場と協業して業務改革に取り組んでいきます 。
先行事業所で業務改善の好事例を創出することに加え、これまでの各現場のチャレンジを幅広く紹介するこで横展開し、業務改善の輪を広げていきます。
◆取組紹介: 立川児童相談所 (福祉局)
立川児童相談所では、2023年3月からAI音声マイニングを導入し、児童福祉司等の電話相談業務をデジタルツールにより効率化しています。
児童相談所には、虐待などをはじめとした子供に関する相談が毎日寄せられています。児童福祉司は電話や対面で相談を受け、記録化して様々な支援を行います。相談ごとの会話量は大変多く、話しながらメモを取る負担もさることながら、相談後に記録としてまとめる作業は、児童福祉司の業務の多くを占めていました。
この相談対応業務にAI音声マイニングを導入しました。相談者との電話内容を自動でテキスト化し、児童福祉司が会話に一層注力できるようになりました。また、会話内容の要約機能やスーパーバイザーとのチャット機能のほか、会話中のキーワード(例:「虐待」など)に合わせた手引き類のリンクが表示されます。その場で関連情報を確認することができるため、正確で確実な対応や的確な案内を行えるほか、経験の浅い若手職員の育成にも役立っています。
AI音声マイニングを導入する際は、所内のボトムアップで様々な試行錯誤を行いました。AI音声マイニングに適したマイクとして骨伝導マイクを採用したこともその1つです。「現場からでないとDXは動かない」というのが現場の職員の声。今後は、記録を分析して相談対応などに生かすことも視野に、活用の幅を広げていく予定です。
立川児童相談所では、このほかにもタブレット端末の導入や、2023年7月に児童福祉司・児童心理司全員にスマートフォンを配備して訪問業務への利用を始めるなど、現場の声に寄り添ったデジタル機器の活用を着実に進めています。
今後の取組 (2023年10~12月)
- 2025年までに全600事業所でのデジタルを活用したワークスタイル変革の実践に向けて、各局・各事業所と協働しながら、引き続き好事例の創出とその横展開を進めていきます。
- 各職場が主体となった自律的な業務改革スタイルの確立を目指し、先行事業所とデジタルサービス局との意見交換を通じて、課題の洗い出しやデジタルツール等の解決策提案、技術フォローなどの協働を一層強化します。
3 システム基盤のクラウド環境への転換
進捗状況(2023年7~9月)
(1)都庁のデジタル環境の強化
第2四半期では、TAIMS(STEP3)に向け、設計委託の契約手続を完了し、基本設計に着手しました。
(2)都庁の業務システムのクラウドベースへの転換
都庁の業務システムをクラウドベースに転換させる際の方針となる「クラウド転換基本方針」を7月に策定し、庁内各局への説明会を開催しました。また、クラウドインフラ構築に向けた要件定義の精緻化を進めました。
(3)共通デジタルツール・プラットフォームの提供
- ノーコード・ローコード開発ツールの導入に向けた条件や仕様等の検討を進めました。
- ID統合管理については、制約条件等を踏まえて全体的な構想を再整理し、将来の姿を見据えた実装方法の検討を進めました。
- ファイル共有ストレージについては、各局への詳細ヒアリングを実施するとともに、契約手続に着手しました。
- 生成AIについては、全局で安全に利用できる環境を提供しました。
今後の取組 (2023年10~12月)
(1)都庁のデジタル環境の強化
第3四半期には、TAIMS(STEP3)の基本設計を進め、詳細設計に着手します。
あわせて、来年度更新する機器の契約手続を開始します。
(2)都庁の業務システムのクラウドベースへの転換
引き続き、クラウドインフラ構築に向けた要件定義の精緻化と基本設計を進めていきます。
(3)共通デジタルツール・プラットフォームの提供
- ノーコード・ローコード開発ツールについては、引き続き、導入に向けた検討を進めていきます。
- ID統合管理については、これまでの検討を踏まえて、基礎的な機能の構築を進めていきます。
- ファイル共有ストレージについては、3局30TB分の整備を進めるとともに、移行計画及び利用ルールの策定を進めていきます。
- 生成AIの利用環境については、利用状況やニーズを考慮し、機能の見直しや追加、修正などの改善を検討していきます。
4 場所にとらわれない柔軟な働き方の推進
進捗状況(2023年7~9月)
【テレワークの活用】
- 6月から7月にかけて実施した、テレワークに関する職員満足度調査の結果を公表しました。テレワークについて総合的に満足・やや満足と回答する職員の割合は約78%で、2022年度の前回調査時から約17%増加しました。
- テレワークに関するノウハウ等をまとめた「ワークルール」に、様々な職場におけるテレワーク活用に関する工夫やコツ、好事例等を新たに盛り込み、「テレワーク活用による最適な働き方に向けた取組・TIPs集」としてブラッシュアップし、全庁に展開しました。
- 時差勤務・フレックスタイム制・テレワーク等を組み合わせた柔軟で多様なワークスタイル例を全庁に紹介し、活用を呼びかけました。
今後の取組 (2023年10~12月)
- テレワーク活用による最適な働き方に向けたノウハウの習得を目的に、管理職及び管理職候補を対象とする講習会(動画配信)を実施します。