進捗状況(2022年10~12月):東京都立大学ローカル5G環境を活用した最先端研究プロジェクト【総務局】

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進捗状況(2022年10~12月)

5Gを活用した最先端研究

○5Gを活用した最先端研究を行い、成果を社会に発信しました。(5テーマ)

■研究課題1「プレス加工DXのための5G環境IoTプラットフォームの構築

研究代表者:楊 明 教授(システムデザイン研究科)

本研究では、金属プレス加工において、従来、職人の経験や勘に頼っていた異常検出や製造過程における不良品発生率の減少、金型の摩耗予測などの自動化を可能にする、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための5Gプラットフォームを構築することを目指しています。ローカル5Gを活用したプレス機械や金型内蔵センサなど、複数センサからのセンシング情報を無線伝送する実証実験を行います。また、プレス加工のプロセスを可視化するとともに、無線伝送の特性により、どのような影響があるかなどを検証し、実用性評価を行います。将来的には、このシステムを活用することで、少子高齢化による労働力確保の課題を踏まえ、若手人材の育成にも寄与することを見込んでいます。

2022年10月から12月までの間に、以下の事項に取り組みました。

・マイクロ板材(※)鍛造用シミュレーションソフトの導入及びシミュレーションモデルの作成
・マイクロ板材鍛造実験を実施し、センサ情報の取得及びデータの分析
・ミクロな領域における摩擦、潤滑、表面損傷などを評価するための金型を製作し、プレス加工の摩擦摩耗特性評価を実施
・センサ用アンプ(※)及びデータロガーを新たに手配し、5Gルーターとの接続による無線通信環境を整備
・塑性加工学会の第73回塑性加工連合講演会(11月)にて、プロセス可視化に関する研究成果を発表
(※)マイクロ板材鍛造:金属板材を精密機器等の微小な部品へと成形するプレス加工の一種
(※)アンプ:センサに入力された信号を、接続されている機器に対して使用可能な信号に変換する装置

図1 金型内蔵センサとシミュレーションとの融合によるプロセス可視化
(板材鍛造時の金型内の圧力分布をコンピュータシミュレーションで算出し、実験時のセンサ情報を合わせることで、プロセス可視化を実現)
(a)マイクロ板材鋳造全体図(b)板材鋳造モデル実験の金型と材料

図2  精密プレス装置構成写真

■研究課題2「5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築

研究代表者:ヤェム ヴィボル 助教(システムデザイン研究科)

5Gの超高速通信を用いて、離れた複数空間において、自分や誰かの分身となって行動したり、空間内の様々な情報を、まるでその場にいるかのように伝えてくれるロボットの開発や操作等の研究に取り組んでいます。地域医療や高齢者支援、災害支援の現場での活用を見込んでいます。

2022年10月から12月の間に、以下の事項に取り組みました。
・自分があたかも同時に離れた複数空間に存在するような感覚(二重身体認知)に関する調査実験を実施し、その成果に関する論文を人間拡張分野の国際学会、Augmented Human 2023へ投稿
・アバターロボットの安全な走行をサポートする空間地図について、3Dスキャンデータを統合し、空間地図の詳細度を向上するアルゴリズムを作成
・情報学分野の国際ジャーナル、MDPI Informaticsに、体験の総合満足度の推定に関する論文が採録
・ソフトウェア、知識、情報管理及びアプリケーションに関する国際会議、IEEE(Tech Co-sponsor) SKIMAにて、視覚と身体移動時の加速感覚との関係性に関する成果を発表
・学際的な研究領域にまたがる国際ジャーナル、IEEE Accessにて、遠隔操作における指先への感覚に関する論文を投稿

2台のアバターロボットを操縦する際に生じた身体認知に関する調査実験の概念部屋を何度も3Dスキャンし、都度取得したスキャンデータを統合して詳細な3Dデータを作成

■その他の研究
上記のほか、以下の3テーマの研究を推進しています。
各研究の概要については、こちらの都立大ホームページをご覧ください。
・ARゲームで楽しく単独移動を支援するAI車椅子システムの社会実装
・通信資源の利用効率最大化を目指したモバイルネットワーキング
・L5Gネットワークを用いた次世代マルチモーダルセンシング

民間企業等の社会実装促進

○ローカル5G環境の民間活用等を通じて、5Gの新たなユースケースやサービスの創出を促進(2024年度末までに15件)

2022年10月から12月の間に、以下の事項に取り組みました。
・12月までに2件の実証フィールド提供を実施

【実施例】
5G通信技術で使われる周波数帯のうち、ミリ波は非常に大きな情報量の伝送が可能だが、遮蔽物に弱いという特性があります。日本電気硝子株式会社は、南大沢キャンパスのミリ波エリアの一部を遮蔽し、そこに開発したリピーター(※)を設置することで、電波状況が改善されるかの検証を行いました。

(※)リピーター:電波を中継し、屋内の電波状況を改善する装置

今後の取組(2023年1~3月)

5Gを活用した最先端研究

■研究課題1 「プレス加工DXのための5G環境IoTプラットフォームの構築

・マイクロプレス加工のシミュレーションとセンシング情報の融合による高精度プロセス可視化に関する研究計画の策定
・各種金型コーティング膜のトライボロジー特性評価を実施
・プロセス可視化に関する論文を作成し、国際会議AWMFT2023(2023年5月)、ICTP2023(2023年9月)及び塑性加工学会誌への投稿を準備
・塑性加工学会春季講演会(2023年6月)でのプロセス可視化に関する成果発表資料作成

■研究課題2 「 5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築

・3台目のアバターロボットと、その制御アルゴリズムを作成し、ほぼ同時に3台のアバターロボットを操縦する手法を開発
・仮想現実(VR)、拡張現実(AR)分野の国際展示会、LAVAL VIRTUAL 2023へのデモ展示の投稿と準備

民間企業等の社会実装促進

東京都立大学南大沢キャンパスにて、新たにXR(様々な仮想空間技術)の分野における実証実験1件を行えるよう調整中です。