進捗状況(2024年1~3月):東京都立大学ローカル5G環境を活用した最先端研究プロジェクト【総務局】

プロジェクトイメージ

5Gを活用した最先端研究

○5Gを活用した最先端研究を行い、成果を社会に発信しました。

■研究課題1「プレス加工DXのための5G環境IoTプラットフォームの構築」

研究代表者:楊 明 教授(システムデザイン研究科)

 本研究では、金属プレス加工において、従来、職人の経験や勘に頼っていた異常検出や製造過程における不良品発生率の減少、金型の摩耗予測などの自動化を可能にする、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための5Gプラットフォームを構築することを目指しています。そこで、プレス機械や金型に内蔵された複数のセンサのセンシング情報を無線伝送する実証実験について、ローカル5Gを活用して行います。この実証実験では、プレス加工のプロセスを可視化するとともに、無線伝送実施時にどのような影響があるかなどを検証し、実用性評価を行います。将来的には、このシステムを活用することで、少子高齢化による労働力確保の課題を踏まえ、若手人材の育成にも寄与することを見込んでいます。

2024年1月から3月までの間に、以下の事項に取り組みました。

(1)センシングシステムの開発

・2023年1月に開発した金属板材成形における金型摩耗予測センシングシステムについて、金型コーティングおよびプレス加工の摩擦摩耗特性評価の実施成果の一部を2024年10月の塑性加工学会で発表する予定です。

図1

図1

AEセンサと金型内蔵力センサによる摺動摩擦特性の測定評価装置概要                  力センサとAEセンサの情報を融合することで、物理現象を総合的に評価し、金型摩耗の進行を適切に判定します。

(2)プロセス可視化システムの開発

・金属材料の通電加熱鍛造加工において、金型と素材の温度分布を正確に測定するために、シミュレーションとセンシング情報のデータ同化手法によるプロセス可視化システムを2023年1月に開発しました。その成果の一部を2024年5月に台湾で行われる国際会議ICMMPTで発表する予定です。

・鍛造加工におけるプロセス可視化を実現するために、協力企業である株式会社ヤマナカゴーキンと共同研究で金型設計開発を行いました。今後、実金型を製作し、その金型の有効性評価を実験的に行うことで、さらにセンサとシミュレーション情報の融合による高度なプロセス可視化システムの開発を進める予定です。

図2

図2

センサの情報とシミュレーション情報をデータ同化の手法を用いて、互いに補完することで、 金型内部の温度分布を正確に得ることができ、プロセス可視化の実現につながります。

(3)非接触型変異センサの開発                         

・プレス加工のプロセスを可視化するために、プレス成形時の素材流入挙動の測定に適した超音波プローブを用いた非接触型変位センサを開発しました。また、基礎特性評価および高精度化のためのデータ処理アルゴリズムを組み立てや、実プレス加工での検証を行いました。

(4)小型無線通信システムの開発

・センサ信号のローカル5G無線伝送を可能にする小型無線通信システムを開発し、その通信特性や信頼性評価を実施しました。

図3

図3

センサ信号のローカル5G無線伝送可能な小型無線通信システム

■研究課題2「5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築」

研究代表者:西内 信之 教授(システムデザイン研究科)

 5Gの超高速通信を用いて、離れた複数空間において、自分や誰かの分身となって行動するロボットや、空間内の様々な情報を、まるでその場にいるかのように伝えるロボットを開発し、操作等の研究に取り組んでいます。地域医療や高齢者支援、災害支援の現場での活用を見込んでいます。

2024年1月から3月までの間に、以下の事項に取り組みました。

・様々な姿勢でも体験できるよう、前庭感覚提示装置の機構の小型化と軽量化をさらに改善し、着座と立位の姿勢を提示可能にしました。また、この新型装置の動作を確認し歩行レンダリングを行っています。

・複数ローカルオペレータが1つのアバタロボットを共同で操縦できるようにし、アバタロボットに取り付けた複数ディスプレイによってこれらのローカルオペレータの視線を現場の人々に伝えられるようにしました。これを活かしてハイブリッドイベントなどにも支援でき、この内容を筑波大学産学連携部にて特許申請を行いました。

・NHK放送技術研究所で開催された立体メディア技術研究会(3DMT)にて、オペレータがほぼ同時に複数空間に存在する多重身体の感覚を知覚させる手法について研究成果の発表を行いました。

・東京大学で開催された精密工学会春季大会にて、アバタロボットの自立化のための一つの技術として、画像データから被写体の3次元情報を取得・加工する処理の内容を発表しました。

前庭感覚提示装置の改善

前庭感覚提示装置の改善

その他の研究

上記のほか、以下の6テーマの研究を推進しています。

各研究の概要については、こちらの都立大ホームページをご覧ください。

・ARゲームで楽しく単独移動を支援するAI車椅子システムの社会実装

・通信資源の利用効率最大化を目指したモバイルネットワーキング

・L5Gネットワークを用いた次世代マルチモーダルセンシング

・超実時間モニタリングのためのロボット知能化基盤技術と5G社会

・6Gに向けたハイダイナミックレンジポジショニング技術の創出

・L5Gネットワークを用いた次世代マルチモーダルセンシング

・”全ての人の手元まで”を実現するマイクロ物流プラットフォーム

民間企業等の社会実装促進

○ローカル5G環境の民間活用等を通じて、5Gの新たなユースケースやサービスの創出を促進

(2022年度末までに7件実施しました。2024年度末までに15件実施することを目標としています。)

2024年1月から3月の間に、以下の事項に取り組みました。

・3月までに6件の実証フィールド提供を実施(2023年度は、累計で15件の実証フィールドを提供)2024年度までに15件という目標件数を、2023年度までに大幅に上回って達成しました。(2022年度からの累計22件)
 東京都立大学では、2024年度も引き続き、民間企業等による社会実装を促進していきます。

【実施例】

 株式会社sci-boneとプロトスター株式会社は、新たに開発したセンサーとローカル5Gを用いて、人の動きを分析する実証実験を実施しました。開発した軽量・小型のセンサーを被験者の首元に装着し、被験者のランニング時のデータを、ローカル5Gを通じてサーバーに伝送することで、ランニング時のピッチ、足の滞空時間、左脚と右脚のばらつきなどをリアルタイムに分析できました。

 この実証実験は、本学で開催した「5G活用アイデアソン2023-UPGRADE CAMPUS LIFE-」の最優秀アイデアを基に実施されました。当日のイベントの模様は、起業LOG(起業家や経営者に有益な情報を提供する国内最大級のWebメディア)に掲載されています。

開発したセンサーと実証実験に用いたローカル5G対応スマートフォン

開発したセンサーと実証実験に用いたローカル5G対応スマートフォン

センサー装着の様子

センサー装着の様子

今後の取組(2024年4~6月)

5Gを活用した最先端研究

■研究課題1「プレス加工DXのための5G環境IoTプラットフォームの構築」

・プレス加工のシミュレーションとセンシング情報の融合による高度プロセス可視化に関する研究を株式会社ヤマナカゴーキンと産学連携で、実施を進める。

・各種金型コーティング膜のトライボロジー特性評価を実施する。

・5G環境IoTプラットフォームを構築し、各種プレス加工への適用および有効性評価を実施する。

・プロセス可視化に関する論文を作成し、塑性加工学会誌への投稿を準備する。

■研究課題2「5G通信で遠隔マルチワークを可能とする代理身体システムの構築」

・新型前庭感覚提示装置の自由度を増やし特許申請の準備をする。

・アバタロボットと複数ディスプレイを用いたハイブリッドイベント支援システムの製品化のため、事業を立ち上げる支援や計画の調査を行う。

・VR酔いの推定に関する内容を日本バチャールリアリティ学会に論文誌として投稿する。

民間企業等の社会実装促進

■実証実験を随時受付中!
都立大学では民間企業等の社会実装促進を目的に、ローカル5G実証フィールドを無償で提供しております。実証フィールドの詳細については、都立大ホームページをご覧ください。